一昨年の大河ドラマ「新選組!」の続編、「新選組!! 土方歳三 最期の一日」。
大河ドラマの続編が製作されるのは、過去に例がなく、それだけファンの思いが強かった作品だったという事ですよね。自分もこの続編が製作されると知った時は嬉しいと同時に、終わってしまうという悲しみが襲ってきて、とても複雑な気分でした。放送、そして視聴後、なかなか気分が落ち着かなかったのですが。。。以下、感想というか、涙ポイントのレポ?、です(苦笑)
「待たせたな!」という言葉とともに新選組隊士の前に現れた土方歳三。「組!」の池田屋でのあの場面が思い浮かびます。島田など隊士の面々は土方を迎えた事で意気揚々となり、尾関が掲げるのは、新選組の“誠”の旗。この旗がぼろぼろになっているのが今の戦況を表しているようで、辛くなりました。
陣へ戻り、隊士達に酒を差し入れる土方、そして山南敬助の事を語る土方の表情は、近藤勇が生きていた時の“鬼の副長”と呼ばれた頃の顔よりは、穏やかでした。かつて、山南と接していた頃は、こんな表情は見られませんでしたね。 新参の隊士に「奉行と呼ばすに、副長と呼んでくれ」とか、池田屋の時にいた古参の隊士だけを招き、今後の指示を与える様子は、やはり“本当の”新選組は、近藤とともに活動していた時のもの、という思いがあるからこそでしょう。
そんな土方を心から信頼している島田の子供のような我侭な言動と、島田に対して「また一緒に戦う時がくる」という土方の言葉と手に温もりが感じられて、涙を誘いました。。。
「鉄」と呼んで可愛がっている、市村鉄之助(彼の幼さが、「組!」当初の総司を彷彿とさせます)を招いて、多摩へ行け、と命令する時、一瞬、鬼の表情が甦りました。ここで鉄之助に、佐藤彦五郎へ届けて欲しい、と包みを託す土方。その包みの中身は見なくても分かっています。そして、さらに土方が胸元から取り出したものは、“あの”コルク。コルクは、沖田みつの手元にわたるようにしてほしい、と伝える土方。もう、ここで号泣です(涙、涙、涙)「組!」総集編で、みつが持っていたコルク、そこにつながるようにきちんと計算されている三谷さん。。。コルクのエピソードは、土方と近藤の友情を意味する大事な小道具です。これは完璧にやられてしまいました(>.<)
そして、鉄之助との会話から出てきた“生き物の中で一番強いものは何か”という話題をもって、土方の回想シーンへと。
ここでは試衛館時代の懐かしい面々が集っています。土方、総司、山南、平助、永倉、左之助、源さん。天真爛漫な総司、柔らかな笑みをたたえた山南、みんなを見守る源さん、ここでの土方の表情は、本当にあの頃の表情そのままです。「一番恐ろしいのは、人ではないか。人は人を欺く」という言葉は、やはり山南さんの口から出るにふさわしい台詞でした。そして、回想シーンが終わり、土方の「みんな、いなくなっちまった」との言葉にまた涙。。。土方の孤独ぶりが伝わってきます。
永井との会話の中で、「俺が何のために今日まで生きてきたか、全ては近藤さんの無念を晴らす為、あの人が死んだ時に俺の人生も終わった。それでも俺が死ななかったのは、近藤勇を罪人のままにしたくなかったから」という言葉が、土方の近藤に対する深い深い思いを感じます。ずっと、心の中で近藤と共にあるのですね。亡き近藤の墓を建てた土方、墓に供えたのは、ダンダラの羽織を半分。もう半分は我が手に。
降伏を決めた榎本武揚と直談判する為に、土方は榎本の元へと向かう。その行く手を阻むのが大鳥圭介。大鳥とのやり取りの中、「世の中、机の上の計算どおりにはならねえって事だ」と論を展開してくる土方に対し、「ひ~じ~か~た君!」と声を裏返し(^^; さらに総裁を決める際の入れ札で、唯一、大鳥に一票入っていたのは、大鳥自身で入れたものだと土方に指摘され、図星だったのでしょう、逆ギレしてくる大鳥の態度が、このドラマの中で唯一の笑える部分でした。
大鳥を演じる吹越満さんの飄々としながらもユニークな演技が好印象でした。にしても、随分リアルな五稜郭周辺のジオラマを前に戦法を練っていた大鳥。彼が作ったという設定ではないかと思ったのですが、だとしたら、マニアックだ(笑)
そして、土方と榎本の直接対決。密室の対峙。ここまで長い台詞の応酬が続いたのは、「組!」ではなかった場面。緊迫したシーンは数々ありましたが、この男同士の論戦は最高にいい場面でした。
榎本を演じる片岡愛之助さん。品があり、しかし土方に自らの夢を語る時は少年のような目の輝きを見せていた部分もあって。口跡も良く、しっかりとした演技力は素晴らしかったです。さすが愛之助さん、期待以上の榎本でした。「組!」の時と同じではこの場面は出来なかったと思います。
榎本との激論の末、「ようやく気づいた、俺は死に場所の事しか考えてなかった。俺たちは大事な事を忘れていたようだ。あきらめないって事だ。これは死ぬ為の戦いではない、これから俺達は生きる為に戦うんだ」そう言って、榎本の心を戦いの方向へ導いた土方。
そして、土方、榎本、大鳥の心が一つになった瞬間、この3人の中に、新選組隊士達にあったのとはまた違う男達の連帯感が生まれていました。しかし、それぞれの心にあったものは、決して明るい未来ではなかったはずです。
土方は一人、部屋に戻る。そこには彼の句集、写真、そしてあのダンダラ羽織の半分。それを鉢巻きにして、いざ、出陣。
榎本との最後の別れとなったその時、「死んではならんぞ」という彼に向かって「榎本さん、あんたこそ死ぬんじゃないぞ、生き延びてこの地に夢の花を咲かせろ、そんな事、あんたにしか出来やしない」と微笑む土方。自分も出来ることなら、榎本のような夢を持って生きたかったのかもしれない、しかし、土方はやはり、近藤亡き後、自らの死に場所を探していた、そう思えてなりません。。。
刻一刻と近づいてくる“その時”、そして一発の銃声。
傷を負いながらも敵に対し、新選組副長、土方歳三、と名乗りをあげた土方。。。最後まで。。。やはり近藤と共に創り上げ、近藤を支えてきた“新選組”の“副長”として最期を迎えたかったのだと思います。 そう、その最期はとても満ち足りた表情でした。「組!」での近藤の最期の時のように。
不思議な事に、この場面では涙が出ませんでした。それよりも、その死の知らせを受けた島田の叫び、そして尾関が再び掲げた“誠”の旗に、完全崩壊。。。。。。。。。。。。。これ以上の結末はないです。
土方歳三=山本耕史、本当にその姿は生き写しとまで思うほどそのままに。身も心も完全になりきっていた、と耕史さんも仰っていましたが、本当にその通りで。これは大河ドラマ史に残る名演だったと思います。。。
これにて、三谷幸喜作「新選組!」は完結しました。
しかし、新選組、その隊士達、そして土方歳三は永遠に人々の心の中で生き続けます。
「新選組!! 土方歳三 最期の一日」 脚本:三谷幸喜
土方歳三:山本耕史
榎本武揚:片岡愛之助
大鳥圭介:吹越 満
近藤勇:香取慎吾
沖田総司:藤原竜也
藤堂平助:中村勘太郎
原田左之助:山本太郎
永倉新八:山口智充
山南敬助:堺雅人
井上源三郎:小林隆
斎藤一:オダギリジョー
島田魁:照 英
尾関雅次郎:熊面鯉
蟻通勘吾:山崎樹範
山野八十八:鳥羽潤
市村鉄之助:池松壮亮
相馬主計:小橋賢児
松平容保:筒井道隆
武蔵野楼女将:南野陽子
永井尚志:佐藤B作
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